
前回の記事で、筋肉の発達を促すには「オーバーロード(過負荷)」と「漸進性負荷抵抗」の原則が必要と解説しました。
では、高重量のウエイトほど効果は上がるのでしょうか?
今回は、とくに初心者の方がボディメイクをするために覚えておきたいテクニックを2つ選んで解説していきます。
対象の筋肉に負荷をかけることが重要
▼「オーバーロード(過負荷)の原則」「漸進性負荷抵抗の原則」についてはこちら

筋トレを始めたばかりの初心者がもっとも感心してしまうのは、動画などで上級ボディビルダーが高重量のベンチプレスやデッドリフトを行っている光景かもしれません。
実際、昔からベンチプレスで挙げられる重量が「強さ」を示す一つの基準と思われている面はあります。
ただし、筋肉をつくる(各部位の筋肉を鍛えてボディメイクを行う)ことを主目的とする場合は、単に高重量のウエイトを挙げることがトレーニングの目的ではありません。
(動作をコントロールせず)バーを胸や床の上で弾ませたり、極端に可動域が狭かったり、フォームを無視して対象とする部位以外の筋肉を働かせれば、より重いウエイトを挙げることができるかもしれません。
ですが、そうした方法で行えば動作が楽になり、筋肉に与えられる刺激は減ってきてしまいます。
数か月ごとに筋力の伸びを計るにはよいのですが、毎回マックス(1回挙げられる最大の挙上重量)に近い重量に挑んだりすることは、均整のとれた体をつくるには逆効果になる場合もあります。
(トレーニング経験の浅い人はケガの恐れもあるので、とくに注意が必要です)
重要なことは可能な限り重いウエイトを挙げることよりも、対象の筋肉の働きを十分に感じ取れるよう、可動域を通して筋肉のテンション(緊張状態)を保つことにあります。
テンション継続法
「テンション継続法」は、筋肉づくりのためのテクニックのひとつで、その名の通りウエイトを上下する可動域を通して筋肉のテンションを保つテクニックになります。
鍛えている筋肉に対して負荷が抜けないようにするには、弾みをつけた動作を避けたり、持ち上げたときにヒジやヒザを完全には伸ばし切らないようにしたり、フォームを維持して補助筋群の働きを抑えるようにする必要があります。
反動を使えば動作は楽になりますが、対象の筋肉を休ませて、エクササイズの効果は半減することになります。
(上級者の場合はセットの最後にわずかに弾みをつけて回数をこなし、さらに筋肉を追い込むなどの方法もありますが)通常はセット中、コントロールした動作でウエイトを上下し、対象とする筋肉を十分に働かせることが重要になります。
(筋肉をつけるには、8~12回⦅部位により、多少の増減があります⦆が目一杯となるウエイトを選んで行うのが一般的ですが、とくに初心者の方の場合は軽めのウエイトでやや回数を多くして行うと筋持久力がつき、対象の筋肉が段々と刺激されてくるのを感じ取ることができます)
ピークコントラクション法

レッグプレスで大腿四頭筋(太ももの表側の筋肉)をトレーニングする場合、動作の最後にヒザを伸ばし切ってしまうと、大腿四頭筋への負荷が抜けてしまいます。
この場合、トップポジションでヒザが伸び切る寸前で動作を続けるようにすれば、セット中に大腿四頭筋への負荷が継続されることになります。
そして、トップポジションで意識的に筋肉を絞り込むように力を入れれば、さらに筋肉へより大きな刺激を与えることができます。
このテクニックを「ピークコントラクション法」といいます。
例えば、コンセントレーションカールでヒジを曲げてダンベルを持ち上げた際、トップポジションで上腕二頭筋(力こぶの筋肉)を1秒間、さらに力を入れて絞り込むようにすると、上腕二頭筋にピークコントラクションを得ることができます。
ピークコントラクション法は、一般的に腕などの小さい部位に適用させやすいテクニックですが、アーノルド・シュワルツェネッガーはどのエクササイズでもピークコントラクション法を利用できるようにすることを勧めています。
(例として、ペックディックフライのトップポジションで胸筋を絞り込む、シーテッドロウでハンドルを引き切ったときに背中の筋肉を絞り込む、ダンベルシュラッグでダンベルを挙げきったときに僧帽筋上部:首の付け根を絞り込む、など)
▼各部位の筋トレ種目についてはこちら

まとめ:安全に効果的に進歩していくために
体づくりを目的とした筋トレでは、
①対象とした筋肉のテンション(負荷がかかって、緊張した状態)を保つこと
②さらにウエイトを挙げたトップポジションで、筋肉を絞り込むようにして力を入れる
初心者の方も、この2点を意識すると効果的です。
筋肉をつけてボディメイクをするための筋トレでは、単に高重量を扱うのではなく、対象とする筋肉を働かせて動きを感じ取れるようにするほうが、より安全に効果を上げ続けていくことができます。