
スクワットの要領で床からバーベルを持ち上げるデッドリフトは、全身の筋力を示す指標にもなるエクササイズです。
⦅ロニー・コールマン:98~05年ミスターオリンピア=ボディビルチャンピオンが、805ポンド=365kg(!)のデッドリフトを行う動画が公開され、一段と人気が出てきました⦆
今回はデッドリフトで鍛えられる筋肉・基本フォームと注意点、重量をアップするための応用種目やテクニックなどを解説していきます。
デッドリフトで鍛えられる部位
デッドリフトで鍛えられる主な筋肉には、大殿筋(ヒップ表面の筋肉)・ハムストリングス(太ももの裏側)・脊柱起立筋(腰の周辺、脊柱に沿って走る長い筋肉)があります。
大殿筋は、股関節(太ももの付け根)の角度が90度以下のとき、上体を起こす動作の開始時にもっとも大きな力を発揮します。
上体が起き上がって、股関節の角度が大きくなるにしたがって、ハムストリングスの働きも大きくなっていきます。
そして、動作の最後に上体を起こす局面で脊柱起立筋(とくに腰の周辺の部分)が働き、股関節と背中が完全に伸ばされます。
この他にも、膝や足首を伸ばすのに大腿四頭筋(太ももの前面)やカーフ(ふくらはぎ)、腕を体幹部に引き寄せるのに広背筋・大円筋・僧帽筋・菱形筋といった背中側の筋肉や上腕二頭筋(腕、力こぶの筋肉)なども連動して働いています。
基本のデッドリフトのフォーム

基本のデッドリフトのやり方は、プレートを付けたバーベルの下に足をおいて、腰幅のスタンスで立ちます。
背中をまっすぐに(丸めたり、極端に反らせたりせず、自然に弓なりになる状態を保って)、頭を起こしてヒザと股関節を曲げ、肩幅のグリップでバーを握ります。
ここからヒザを伸ばして、股関節(太ももの付け根)を前に押し出すようにして、バーベルを床から持ち上げて繰り返します。
スタートする前に息を吸って体幹部に力を入れ、背中を弓なりにしたまま上体を前に倒し、息を吐きながら脚・殿筋(ヒップ)・背中・腕に力を入れ、上体を起こして一気にバーベルを床から持ち上げるようにします。
デッドリフトを行う際の注意点

●動作中はバーベルを体(脚の前面)に沿わせるようにして上下すること。(体から離れていくと、腰への負担が大きくなります)
腰を後方へ引いた姿勢から、肩がバーの真上にくるよう維持すると、全身の力を効率よく使うことができます。
●とくに挙げきったとき、体を反らせすぎないこと。トップポジションでヒザが曲がると脚の力が抜け、負荷が減少することになります。
また、背中を反らせすぎると、腰を痛める要因にもなります。
●動作中、上腕三頭筋(上腕の裏側、二の腕の筋肉)も引き締めておくようにします。こうするとヒジが伸びて、上腕二頭筋(上腕の表側、力こぶ)への負担を軽減することができます。
●バーベルを下ろす際も、コントロールしてゆっくりと力を抜いて下ろすようにします。
(重量を競うパワーリフティング出身のコールマンは、バーベルを挙げたらガチャンと下ろしていましたが)一般的にはゆっくりとウェイトを下ろした方が使われる筋繊維が多くなり、筋肉をつけるのに効果的です。
(ジムのスタッフに「静かにやるように」と、注意されずにも済みます)
●かかとが平らなシューズを利用すると、床から持ち上げるとき、足裏に力を入れて挙げやすくなります。
可能であれば底が柔らかいランニングのシューズより、レスリングシューズや複数のエクササイズができるクロストレーニングのシューズのほうが、高重量を扱いやすくなります。
デッドリフトの応用種目

ワイドスタンスデッドリフト(脚を肩幅かそれより広くつき、つま先とヒザを外側に向けて行うデッドリフト。スモウデッドリフトともいいます)だと、動作範囲がやや狭くなりますが、腰への負担が軽減され、大腿四頭筋(太ももの表側)や内転筋(内側)を強化することができます。
初心者や女性の方も、ダンベルを縦にして行うと少し軽めの重量でもハムストリングス(太ももの裏側)や内転筋・殿筋(ヒップ)が鍛えられ、ヒップアップにも効果的です。
また(まだ置かれているジムは少ないですが)、トラップバー(六角形の形をしたバー)を利用するとプレートの間に立つことができ、腰への負担が軽減され、脚(とくに大腿四頭筋)の力を発揮することができます。
またニュートラル(手のひらを向き合わせた)グリップだと、前腕にも力が入り、より重い重量を扱うことができます。
(トラップバーがない場合は、ダンベルで代用することもできます)
重量を上げるためのテクニック

スティッキングポイント(バーベルが上がりづらくなる局面)を克服するには、動作範囲を区切って弱点となる部分を強化するというやり方があります。
例えば、バーベルを床から引き上げる局面だと、通常より1.5倍のバーベルを床にセットして、できるかぎり力を入れて引き上げるようにします。
(実際には挙がらなくても、床から引き上げる際の筋肉を強化することができます)
動作の中盤の強化では、中程度の重さのバーベルで動作範囲を区切り、すねの中ほどから股関節が伸び切る手前までの範囲で繰り返すようにします。
(ルーマニアンデッドリフトに近くなりますが、ハムストリングスや殿筋の強化に効果的です)
動作の終盤の強化には、ラックプル(パワーラックのセイフティーバーをヒザの少し下にセットして、上半分の動作を繰り返す)が効果的。
やや重めの重量で行うことで、背中の広背筋や僧帽筋が強化され、背中の上部を鍛えることができます。
まとめ
デッドリフトは、脚・殿筋(ヒップ)・背中など、とくに体の後ろ側を鍛えるのに効果的な種目。
床からスクワットの要領でバーベル(またはダンベル)を挙げることで、全身の筋力もアップすることができます。
とくに大切なポイントは、動作中は背中の自然なアーチ(弓なりにした状態)を保ち、体からバーベルが離れないようにして上下すること。
慣れてくるとかなりの高重量も扱えますが、基本的なフォームをマスターし、少しずつ重量を伸ばしていくようにすると土台となる筋力・筋肉をつけていくことができ、また腰などを傷めずに続けていくことができるようになります。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。